キャッシュフロー表の作成の仕方
❶キャッシュフロー表の作成の前に
顧客のライフプランはライフイベント表の作成によって具体化されます。次はライフプランの経済的な裏付けとして「キャッシュフロー表」を作成します。
キャッシュフロー表は一定期間(通常は1年)における家計の収入と支出のうち把握できる資金の収支を計算し、かつその差額によって増減する貯蓄残高を年次別にみていくものです。現状の収支や今後のライフイベントをもとに将来の収支状況や貯蓄残高などをシミュレーションするツールとして使います。
(1)キャッシュフロー表を作成する目的
キャッシュフロー表を作成する主な目的は次の通りです。
■キャッシュフロー表作成の主な目的
- 顧客の家計の体力(収入と支出)を年次別・期間別に把握できる
- 将来にわたって資金収支、貯蓄残高の方向性が確認できる
- ライフイベント費用にちうて、資金的な面で問題ないかどうかチェックできる
アドバイスをするFPの立場からすればキャッシュフロー表は、顧客のファイナンシャルプランニングをするうえで欠かせないものです。ライフイベント表と合わせて必須ツールの1つです。
(2)顧客の現状と家計情報を収集
キャッシュフロー表の作成に必要な情報は顧客の基礎情報と家計基礎データです。これらは通常、面談や質問シート、必要書類などで確認します。
■顧客の基礎情報(例)
- 家族構成
家族の氏名|年齢|生年月日|続柄|職業|扶養控除の有無など - 子供の進路
子供の進学コース|就職や結婚の予定など - 子供の援助資金
子供の結婚や住宅購入などの資金援助 - 住宅
家のリフォーム|買い換え|別荘の建築|2世帯住宅に改築|定年後の田舎暮らし - 親の扶養援助
双方の親への資金援助や介護
■家計基礎データ(例)
- 収入
本人、家族の収入、公的・私的年金、退職一時金、満期保険 - 支出
現在の生活費、住宅ローンまたは賃貸料、教育費、保険料、その他費用など - 住宅ローンの内容
借入金額、年間返済額、利率、借入期間、返済満了日など - 保険の内容
保険種類・保険金額・払い込み満了時期日・年間保険料・契約者名・被保険者名 - 貯蓄金額
預金額の種類・有価証券等の時価・年間積立額と預入期間など
キャッシュフロー表上では、基本的に顧客の基礎情報がライフイベント費用、家計基礎データが収支項目の費用になります。これらを数値化できる定量的情報以外に、顧客の性格や価値観などの定性的情報を収集することも大切です。
(3)キャッシュフロー表に必要な項目
キャッシュフロー表の作成には決まった様式はありませんが、キャッシュフロー表の必須項目として、年間収入、年間支出、年間収支、貯蓄残高の4項目があげられます。この4項目がないと年間の収支や貯蓄状況が分かりません。
①年次の設定・家族構成・年齢を記入する
キャッシュフロー表の年次は通常1月1日から12月31日を1年とします。経過年数や年次を表記しますが、年次は西暦、和暦を併記したほうが分かりやすくなります。
氏名は原則フルネーム、続柄は本人、配偶者、長女などを記入し、年齢は年次に連動させるために各年次の12月末時点の満年齢を記入します。満年齢を使った場合は子供の学齢です、1月1日~4月1日の早生まれと4月2日~12月31にちの遅生まれでは進学年齢が1年違ってきます。
②収入を記入する
収入は可処分所得で記入するのがポイントです
夫婦の場合は例えば夫の給料だけではなく妻のパート収入や一時的収入も忘れずに記入します。年金は公的年金、私的年金ともに夫婦の分を記入します。単位については決まりはありませんが通常は万円単位です。
③支出を記入する
支出項目は顧客の職業や年齢、子どもの有無などを勘案して作成します。主に下記のようなものがあります。
注意が必要なのは使途不明金です。どうしても費目が分からない場合はその他の支出に入れます。
食費、水道光熱費、電話代、小遣いなど比較的定期的に決まった金額の出費があるものは基本生活費として1つのまとめます。
④収入・支出合計と年間収支を記入する
年間収支=年間収入ー年間支出
- 年間収支が黒字の場合、その差益は自動的に貯蓄残高に組み込みます。
- 年間収支が赤字の場合、その差益は貯蓄残高か資金を取り崩します。
⑤貯蓄残高(金融資産)を記入する
初年度の貯蓄残高には預貯金や有価証券などの年末金融資産合計を記入します。次年度以降の貯蓄残高は運用利率を適用させたのち、年間収支で差益、差損が出た分を加えるか取り崩します。
貯蓄残高=前年の貯蓄残高×(1+運用利率)±その年の年間収支
(4)変動率を設定する
キャッシュフロー表に記入する数値は、住宅ローンや保険料など毎年固定の費用以外は、前年の数字に変動率を掛けたものを記入していきます。変動率は物価変動率や給料の昇給率、貯蓄残高には運用利率を使用します。この変動率はあくまでも個人的予測で設定します。
物価変動率や給与の昇給率を設定するときは「実質GDP成長率」や「消費者物価指数」「労働者の賃金動向」などを参考にFPの判断で設定します。物価変動率を使用する項目は「基本生活費」「教育費」「一時的支出」「その他の支出」です
貯蓄残高の運用利率は顧客の資産構成や運用能力、経済情勢などによって変わります。
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